むし歯予防~お歯黒の話~(2)

むし歯予防にお歯黒が役に立っていたことは先月お伝えしましたが、このお歯黒と言う風習にはむし歯予防と全く違う意味をもっていました。この「歯を黒くする習慣」は、平安時代には貴族階級の間に広がり、17~18歳で歯を黒く染めて「成人」であることを表していました。

その後、時代とともに染め始める年齢が低くなり、室町時代には13~14歳に、戦国時代になると武将の娘は早く政略結婚させるために8歳で染めたと言われています。

江戸時代に入ると上流社会の生活様式がしだいに一般庶民にも浸透しはじめ、お歯黒は元禄時代には全国各地に広がりました。そしてこの時期に一部の男子が行っていたお歯黒は姿を消しました。

さて、女子だけのものになったお歯黒ですが、緻密なエナメル質を染めるのはなかなか骨の折れる仕事でした。
そこで、庶民に広がってからは、女性にとって人生の大転換期である婚約・結婚を迎えてはじめて染める風趣となり、ついには既婚女性の象徴となりました。 「黒」は何色にも染まらない色なので「貞操」を意味し、既婚女性の誇り高い心の支えにもなっていたようです。

一方、封建制度下における女性を精神的にも外観的にも人妻として制約するための強力な手段であったとも言えると思います。このお歯黒の風習は、明治政府の近代化政策により、チョンマゲや帯刀とともに禁止されたので、しだいになくなっていきました。そして、大正時代にはほぼ全国からお歯黒の風習はなくなりました。

お歯黒の風習がこのように長い間受け継がれてきたのは、実生活に役に立ち、社会における一種の女性の特権=ステータス(お嫁さんになること)へのあこがれと言うものがあったのではないでしょうか。

現在では「歯を白くする=ホワイトニング」が市民権を得ており、時代が変わると正反対のことが普通になこともあるのですね。当時の人が聞いたら、きっと目が点になることでしょう。



クリニック案内ページへ

歯科治療ガイド HOME に戻る

PAGETOP