高齢者の歯科治療(7)

呼吸路の安全性を確保するための姿勢は、通常の歯科治療とは全く異なります。
そのため、訪問診療の際には普段の考え方を一度脇に置かなければ様々なことがうまくいきません。

例えば、通常の歯科診療では患者さんに仰向けに寝てもらうのが常識です。その理由は、患者さんの口腔内が見やすく、かつ舌根沈下するために舌が邪魔にならずに診療できるからです。しかし、一度試してみるとよくわかりますが、チェアに寝た状態で頭を起こして「うなずき」の姿勢を取ることは簡単ではありません。つまり、実は診療チェアに寝た状態は非常に誤嚥しやすい姿勢なっています。

また、患者さんの口腔内を「上から覗き込む」ことが当たり前になっていると、仮に患者さんが椅子に座っていたとしても、顔を上げた状態でケアすることになりますから、こちらも同様に誤嚥しやすい姿勢となっています。

歯科医療従事者は、つい患者さんの口ばかりを気にしがちです。しかし、訪問診療の場合には、口は最後に触れる場所にすべきと思います。まずは、患者さんに椅子などに腰掛けてもらい、足が地に付いているかどうかを確認し、次に姿勢を調節して、軽くうなずいた状態になってもらった上で、ケアをする側が膝を落として低い位置から口を触る。この順序を守れば、訪問診療の結果は大きく変わるものと思います。

通常の診療とは勝手が異なるかも知れませんが、まずは院内のスタッフ同士で試してやってみると、その効果が実感できると思います。また、若い方たちにとっては、すごく簡単な動きでも高齢者の方々にとっては、思いもよらないくらい大変な動きに値する場合があります。

さらに、唾液分泌が多い方や、持病から咳や痰が絡むことなども発生し、通常の歯科診療ではあまり発生しない事故やトラブルに対しても十分な配慮が必要と思います。



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