高齢者の歯科治療(6)

呼吸路の安全性を確保するためには「咽頭の運動を抑制しない姿勢を取る」ことが大前提となります。具体的には「軽くうなずいた状態」がその姿勢にあたります。

普段、私たちが歯をみがきをする場合には自然とそうしているはずです。これは健常者にとっては何でもない仕草ですが、リハビリが必要な状態の方には簡単なことではありません。重い頭部を「軽くうなずいた状態」で維持するには、相応の力が必要だからです。

そのためには、体幹をコントロールして、良い姿勢を保持しなければなりません。そして姿勢を保持するためには、足底をしっかりと床につけて体重を支えることが必要です。つまり①足底が接地②姿勢を保持③軽くうなずき嚥下、と云う3セットが安全な呼吸路の確保のための姿勢なのです。この3点セットは、患者さんがベット上にいる場合も共通します。猫背の患者さんの場合は、側臥位の状態で足裏に支えを入れてあげればOKです。なお側臥位を取る際には、口腔の反応の良い側を下にすることが基本です。

これは麻痺がある患者さんも同様で、麻痺のない側を下にします。注意が必要なのは、車椅子の場合です。足がペダルに乗っているため、足底接地できているように見えるのですが、実際には車椅子のペダルは不安定ですから体重が乗っておらず、身体の重心は車椅子の座面に残っています。さらに、前方に出している足につられて、腰がずるずると前方に流れるような姿勢になっていきます。

この状態で「うなずき」をしようとすると喉が詰まりますから、口腔ケアをする際には自然と口が前に出ます。すると首が伸びてしまい、咽頭運動が抑制された状態になります。つまり、誤嚥しやすい状態になってしまうのです。

では、どうすれば車椅子でも呼吸路の安全性を確保できるのでしょうか。ポイントは、ペダルは使わずに踏み台を用意する、と云うことです。体重を乗せても安定する踏み台を、膝が鋭角に曲がる位置に置くことで、前述の3点セットを達成できます。さらに、腰のベルトが通る高さに丸めたタオルを入れることで脊椎をまっすぐにすることです。

記述することは、簡単ですが、実際に行う際には、患者さん毎に多少の違いがあったり、最初は、患者さんが怖がってしまったり、困難な場面も出てくると思われますが、根気よく、長い目で対応していくことも大切な要素の一つと考えます。



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