高齢者の歯科治療(5)

間の消化器官は、いわば口から腸までの一つながりの管です。そして、前方で受けた刺激をバケツリレーのように後方へ伝えていくことで全体が動作していますから、最初の入り口である口が動かなければ、消化器官全体がうまく機能しません。

逆に言えば、摂食・嚥下障害を改善することで食事の経口摂食を再開できれば、消化器官の活動が活発になるため、栄養吸収率が向上します。こうしたことが明らかになったことで、摂食・嚥下障害の改善は、リハビリテーション医学の領域でも大きな注目を集めるようになりました。なぜなら、患者さんが栄養不足の状態では、リハビリの実施自体が難しくなってしまうからです。

しかし、一方で、食事の経口摂取は誤嚥性肺炎を引き起こす危険性もあります。ここで出番となるのが、口腔ケアです。食前に口腔ケアを行うことで、口腔内を清潔な状態にしておけば、食事をきっかけとする誤嚥性肺炎は防げるはずです。

ただし、ここにはもう一つの問題があります。口腔ケアに伴う汚れた刺激性唾液を誤嚥してしまう、と云うケースです。実際に、地域の歯科医師が病院からの要請を受けて口腔ケアを行ったにも関わらず、その日の晩に患者さんが発熱してしまい、病院側から「もうお越しいただかなくても結構です」と言われてしまう、と云うような事例は枚挙に厭いません。誤嚥性肺炎を防ぐための口腔ケアが、かえって誤嚥性肺炎を発生させてしまう。

一見すると八方塞がりの状況ですが、実はシンプルな解決法があります。それは「誤嚥しないように口腔ケアを行う」と云うものです。より具体的に言えば、呼吸路の安全性を確保した上で口腔ケアを行えば、誤嚥の可能性をぐっと下げることが出来るものと思います。

私たち(摂食・嚥下障害のない者)にとっても、たまに食事時などに「むせる」ことを経験した方は多くいるのではないでしょうか。この「むせる」と云う現象が誤嚥性肺炎の原因になることが多く、元気に生活している時はあまり気にする方は少ないことと思います。

特に、正月は毎年餅を喉に詰まらせて亡くなると云う悲しいニュースを耳にします。これは誤嚥性性肺炎ではありませんが、高齢者や身体に何らかの障害をお持ちに方などに対しては、回りの者が十分に注意を払うことが、誤飲窒息事故防止の上では重要な事であると思います。餅は小さく切るようにすることも大切ですが「ゆっくり」と食べることもだいじな要素であると思っています。

一年の始まりにあたって「家族の団らん」を見直す機会と考えてみる時と思ってもいいのではないてしょうか。



クリニック案内ページへ

歯科治療ガイド HOME に戻る

PAGETOP