高齢者の歯科治療(2)

高齢者の歯科治療(1)で述べたような例が起きてしまう原因は、現在の歯科医療が、もっぱら「歯科疾患の治療」を目標としていることにあります。

一般的な歯科医院を思い浮かべればすぐに分かるのですが、歯科疾患の治療は、治療対象者が「全身的に健康な人」であることを前提にしています。ということは、健康ではない人、つまり「自分では歯科に来院できない」「自力で歯科治療台での仰臥位を維持できない」「呼吸路を守ることができない」「意識障害があり、コミュニケーションがとれない」といった人に対しては、ほぼ無力なのです。

昨今では医科歯科連携の必要性が認められるようになり、実際に一部では動き出してはいるのですが、いざ歯科の方が病院や施設に入っていくと「あまりに役に立たない」と言われてしまう原因も、同じところにあります。

入れ歯の例では、患者さんが本当に求めているのは“口腔機能の回復”なのに、歯科は“歯科疾患の治療”をしていました。これでは病院側にも、患者さん本人にも喜んではもらえません。医科歯科連携に取り組む歯科の先生は「何か治療をしなければ」と云う思いを強く持っています。しかし、いざ病棟に簡易歯科治療台を持ちこんで患者さんを診てみると、その方が気管切開の手術を受けているなどの理由で治療を行うことが出来ず「何もできない」と落ち込んでしまうことがよくあります。

しかし、そこで落ち込む必要は全くないのです。例えば、誤嚥リスクを避けるために呼吸路を守る安全な姿勢を医療スタッフに指導することは、立派な歯科医療の役割です。

また、よく知られているように、口腔ケアの実施は誤嚥性肺炎の予防につながりますし、プラークコントロールの方法を指導することも大切です。あるいは、経口摂取への移行に備えた口腔機能回復訓練として、口腔ケア時に歯ブラシ等で患者さんの舌を上下左右から押す、と云う指導を行うことも、歯科が果たすべき役割でしょう。

以上のようなことを行えば、肺炎の減少や患者さんの表情が豊かになるなどの明確な結果が必ず出るものですし、結果が出れば医科からの印象も大きく変わるはずです。そうしてお互いの価値観を確認できたところから、高齢者の歯科治療の医科歯科連携が始まるものと考えます。



クリニック案内ページへ

歯科治療ガイド HOME に戻る

PAGETOP